
中隊、連隊、師団。人数が十倍になるたび、指揮官の仕事は別のものになる。顔が見える距離で通じたやり方は、千人には届かない。一万人になれば、自分の言葉を部下が同じように言えるかが、すべてになる。その三つを、すべて自分でやった者として伝える。
「指示が、現場に届かない。」
「厳しくすると、人が辞める。」
その答えは、会社の規模の中にある。
十人の会社で効いたやり方が、百人になった途端に効かなくなる。社長の声が直接届いていたうちは、気合で動いた。届かなくなった瞬間に、組織は止まる。これは経営者の力量の問題ではない。規模が変わったのに、統率の形を変えていないだけである。
自衛隊は、この問題を制度として解いてきた組織である。百数十人の中隊、千人の連隊、一万人の師団。それぞれに指揮官がいて、それぞれに別の統率がある。
全員の名前と家族構成を知っている。誰が今日調子が悪いかが分かる。この規模の統率は、指揮官の人間性がそのまま部隊の空気になる。だから一番やりがいがあり、一番危ない。指揮官が疲れれば、部隊も疲れる。
千人になると、指揮官の声は末端に届かない。間に中隊長がいて、小隊長がいて、班長がいる。ここで初めて「自分が何を言うか」より「部下が何を言うか」が問題になる。方針を短い言葉にして、繰り返し、同じ言葉で言わせる。
一万人になると、指揮官は現場を見られない。見られないものを動かすには、自分と同じ判断を、自分がいない場所で部下ができるようにするしかない。何を大事にし、何を捨てるか。その順序を、組織の全員が同じ順序で言えるか。統率は、ここで「文化」になる。
例えるならば、日本刀のような部隊を作りたい。産経新聞 2014年10月13日 千葉版「郷土の守り」── 第1空挺団長在任時のインタビューより
日本刀は、硬い鉄と柔らかい鉄を何枚も折り重ねて作る。硬さだけなら折れる。柔らかさだけなら曲がる。両方を重ねて、初めてしなやかで強靱な刃になる。
部隊で言えば、硬さは厳しい訓練で鍛えた強靱さ。柔らかさは隊員一人ひとりの幸せと、家族への支え。厳しさと配慮は対立しない。重ねるものである。「厳しくすると人が辞める」の答えは、ここにある。
もう一つ。落下傘で降りるから精強なのではない。即応するから精強である。能力があるから強いのではなく、動けるから強い。

規模別の統率を、実話で。経営者・役員向け60〜120分。幹部研修では自社の規模に当てはめて議論する。
御社はいま「中隊」か「連隊」か「師団」か。統率の形が規模に合っているかを、幹部への聞き取りで見立てる。(内容・形式はZoomで詰める)
若い組織に規律と気迫を。自分を律せる集団へ鍛え直す教育と、幹部への統率講話を、継続して。