
戦争で最初に犠牲になるのは、計画である。前提にした状況と、実際に起きる状況は必ず違う。だから計画を捨てるところから始める。ただし、計画のパーツは使える。決めておくのは行動基準だけでいい。東日本大震災、イラク、落下傘の現場で、それを身体で覚えた者として伝える。
ほとんどの避難訓練は、
シナリオ通りに動く練習になっている。
だが本番に、シナリオはない。
計画は「ある状況」を前提に作られたものである。実際に起きる状況は、必ずその前提と違う。それでも訓練では、全員が決められた経路を、決められた順番で歩き、決められた場所に集まって、拍手で終わる。綺麗に終わった訓練ほど、本番で役に立たない。
本来、訓練はシナリオを示さない。いきなり来る。そのとき各人が自分で判断し、安全な場所に集まる。組織化は、集まってから始まる。逃げるところから組織として動こうとするのが、間違いの元だ。
統裁部(訓練を仕切る側)はシナリオを全部作る。だが訓練を受ける側には教えない。教えるのは行動基準だけだ。いつ来るか分からない中で、各人が判断して動く。それが訓練である。
経路も役割分担も、事前に細かく決めるほど本番で使えなくなる。決めておくのは三行でいい。経路は自分で探す。
戦争で最初に犠牲になるのは、計画である。前提条件と、起きている状況が違うからだ。計画を捨てるところから始まる。ただし、計画の中で作ったパーツ──連絡先、備蓄、集合場所、誰が何を判断するか──は使える。パーツを状況に合わせて組み上げ直す。それが本番の仕事だ。
トップダウンの強い会社ほど、地震が起きても誰も「逃げろ」と言わない。誰かが言うのを待っている。「逃げろ」は上司でなくていい。状況を見つけた人間が言えばいい。それが許される組織かどうかが、生死を分ける。
これは一回ではできない。何回もやる。
本番は、自分で判断するしかないからだ。
計画が崩れたあとに何が残るか。それを、三つの現場で見てきた。
九州・沖縄を担当する方面総監部で、派遣部隊の選定と派遣計画の起案にあたった。手元にある計画は、九州で地震が起きたときのものである。東北で起きた地震に、そのまま使える計画はどこにもない。
だが、部隊の編成、輸送の手段、どこに何があるかというパーツは、計画の中にあった。計画は捨て、パーツを東北に向けて組み上げ直す。橋が流された町に、応急橋を架ける部隊を送る。その判断は、計画書のどのページにも書いていない。


隊員を一人も欠かさず、家族のもとへ帰す。それだけを決めていた。現地で起きることは、日本で立てた計画の前提とは毎日違う。だから計画の細部ではなく、何を守り、何を捨てるかの順序を、隊員全員が同じ順序で言えるようにした。
状況を見つけた者が、その場で言う。隊長の指示を待っていたら間に合わない場面が、毎日あった。
降下訓練で、一人の隊員の落下傘が二つとも開かなかった。地面まで、数十秒。計画も、手順書も、その数十秒には間に合わない。
その隊員が最後に選んだのは、パニックではなく「基本に戻る」ことだった。基本通りの着地姿勢、上昇風と30センチの積雪、そして受け身。隊員は無傷で生還した。何回も繰り返した基本だけが、計画が消えたあとに残る。
地震が起きた。本部長は不在。あなたが代行として、次々に届く状況に判断を下す。計画どおりにいかない場面で、何を捨て、何を守るか。ブラウザの中だけで完結し、送信も保存もされない。
本部長代行をやってみる →家で揺れた。家族はばらばらの場所にいる。身を守る、集まる、組織化する──三行の行動基準だけを手に、紙芝居のように進む短い体験。公開時は、下の先行案内でお知らせする。
先行案内に登録する ↓師団・方面隊で統裁してきた指揮所演習の、企業版。既にあるBCPに沿った状況を、シナリオを見せずに与え、経営陣と幹部に実際に判断させ、講評する。計画を書類から、動ける組織へ。
対象:BCP計画を保有する企業/経営陣・部長級以上
進め方:机上検討 → 指揮所づくり → 実動演習
条件:料金・時期は個別にご相談
職員が自分の仕事の重みと危機管理を考えるグループ検討・発表を、講話で締める。安心して家族を預けられ、障がいがあっても働ける現場をつくるために。現場の苦労を知るからこその鼓舞である。
対象:福祉施設の職員・管理者
形式:施設内研修(半日〜)
条件:料金・時期は個別にご相談
図上演習の定着運用、幹部への講話、有事の相談窓口。一回ではできないことを、何回もやるための伴走。本人がすべて行うため、契約は少数社に限る。
対象:継続して伴走を必要とする企業
条件:料金・時期は個別にご相談
会社には訓練がある。
家には、何もない。
地震が起きたとき、家族はたいてい別々の場所にいる。会社や学校には避難訓練があっても、家族で「どこに集まるか」を決めている家はほとんどない。学べるものも、ほとんどない。
そこで、企業向けに行ってきた図上演習の考え方を、家庭・個人向けの短い講座にする準備を始めた。内容と形式(オンライン講座・動画)は、ご関心の反応を見て決める。先行案内に登録いただいた方に、公開前にお知らせする。
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