
海外展開が止まる理由は、安全でも語学でもない。相手が何を大事にし、何で動くかを読めないことにある。多国籍軍の司令部で、イラクの部族の長の前で、米軍の教室で──文化も言語も流儀も違う相手と任務を成し遂げてきた者として、海外の相手と向き合う人を仕込む。
契約書は整っていた。
通訳もいた。
それでも、相手は動かなかった。
海外展開の失敗事例に並ぶのは、現地パートナーとの主導権争い、合弁解消条件の不備、現地人材の反発、商慣習の読み違い。どれも「安全対策」の話ではない。相手の論理を読めなかった話である。
自衛隊の海外任務は、武力ではなく、この「読み」で成り立っている。相手の面子、序列、時間の感覚、何を言われると引けなくなるか。それを外して、任務は一歩も進まない。
イスラエル・シリア国境。各国の将校が集まる司令部で、組織の生命線である兵站を預かった。言葉も流儀も違う相手と、毎日、物と時間を約束し合う仕事。
部族の長、地元の行政、多国籍軍。立場も利害も違う相手の間で、隊員の命を預かりながら復興を進めた。「指揮官の首に賞金」の状況下で、最初にしたのは敵を作らないことだった。
同盟国の軍の内側で、彼らがどう考え、どう決め、何を評価するかを一年かけて学んだ。日本の常識が通じない場所で、通じる言い方を身につけた。
交渉の前に決まっていることがある。
相手が何を守りたいか、誰に見られているか、いつまでに何が要るか。

海外に赴任・出張する社員への講話。相手の読み方、最初の一回の作法、持ち帰ってはいけない約束。60〜120分。
相手企業・相手国の情報をもとに、面子・序列・時間の感覚を見立て、提案の形を助言する。(形式・範囲はZoomで詰める)
海外の相手と継続して向き合う企業へ、節目ごとの相談と情勢の見立て。
襲撃・誘拐・退避の訓練は、それを専門にする業者がある。ここで扱うのは、相手を読み、信頼を作る側の仕事である。
特定の企業・政府機関・軍への紹介や働きかけは行わない。退官者として守るべき義務に反する情報の提供は、いかなる場合も行わない。